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「子どもが読むもの」と思いがちな絵本の中には、深い内容の「大人にならないと理解するのが難しいのでは」という絵本もあり、読んで感動した絵本を紹介します。

・「かぜのでんわ」作:いもとようこ
山の頂にある、電話線が繋がっていない1台の電話に話しかけると、「もう会えなくなった人に伝えたい想いが必ず届く」と言われています。
たぬきのぼうや、うさぎのおかあさんなど、いろいろな動物が山の頂にやってきます。
ぼうやが「おにいちゃん、どこにいるの? ぼく さびしいよ」と言ったり、おかあさんが「ぼうや、げんきにしている? いいこにしてる? いつものように『ただいま』ってかえってきて!」と言ったり、悲しみや寂しさを訴えています。
動物たちの寂しい、悲しい想いに涙が出ます。
この電話線が繋がっていない“風の電話”は、東日本大震災後の心の復興を願い、岩手県大槌町に実際に設置されました。

・「わたしのいもうと」作:いもとようこ
冒頭の言葉に「わたしをいじめたひとたちは もうわたしを わすれてしまったでしょうね」と書かれています。
新しい土地に引っ越した家族の妹は「言葉がおかしい」「とび箱ができない」など、些細な理由でいじめを受け、学校に行けなくなると、部屋で鶴を折るようになりました。
ありきたりの「かわいそう」「いじめはいけない」と言うだけでは語りきれないほど、この絵本は、重いテーマ“いじめ”を題材にしています。「誰しもが知らないうちに加害者になっているかもしれない」という厳しいメッセージが込められています。

・「おおきな木」作:シェル・シルヴァスタイン
あすなろ書房版の絵本は、村上春樹さんが翻訳されています。
大きな木と少年はいつも仲良しです。木は、成長していく大好きな少年にずっと変わらぬ愛を注いでいました。
初めて絵本を読んだとき「何て身勝手な子どもだ」と思っていました。「少年に何でも与えでも、嬉しかった」と言いますが、本当に幸せだったのか?
時を経て何度も読み返すたびに、考えさせられるおおきな木の深い愛情に、解釈が変わります。大人になってから読んでほしい絵本です。

・「いつでも会える」作:菊田まりこ
1999年「ボローニャ児童賞・特別賞」を受賞した絵本です。
大切な友だち、「みきちゃん」が、いなくなってしまったことが理解できず、シロは探します。
シロは、「みきちゃん」に会えたのか、「シロってよんで あたまをなでて」の言葉に、とめどなく涙が溢れます。
可愛らしいタッチのイラストでテーマの「死」を表現した絵本は、「そうか、いつでも会えるのか」と大人でも感動します。

・「ルリユールおじさん」作:いせひでこ
講談社出版文化賞絵本賞受賞作の絵本です。
いせひでこさんの絵のファンが読み始めた絵本は、本当に素晴らしい文章の世界観に引き込まれる作品ばかりです。
パリでは、手作りの製本を手掛ける職業“ルリユール” があります。
大切にしていた植物図鑑が壊れてしまった主人公のソフィーは、ルリユールおじさんを訪ねます。
ルリユールおじさんの武骨な手で丁寧に直されてゆく図鑑を見つめるソフィーの目と、直された図鑑をぎゅっと抱きしめるソフィーが描かれた絵は、とても印象的です。

「チロヌップのきつね」作:たかはしひろゆき
ストーリーを語るだけでも涙ぐんでしまう、何度読んでも号泣する、ぜひ読んでみてほしい悲しいお話です。

子どもに読み聞かせてもいいし、自分のために大人が読んでも考えさせられる絵本ばかり紹介しました。読んでみると、きっと感動するでしょう。